Da Vinci Studio Blog

株式会社 Da Vinci Studio は 2023 年 7 月に株式会社 Zaim と統合し、株式会社くふう AI スタジオになりました

Core Web Vitals 数値の改善

Da Vinci Studio 第 2 サーバー部、社会人 2 年目の吉延です。 今回は最近開発してリリースしたばかりの 『ごっこランドTimes』で行った Core Web Vitals(CWV) 数値、その中でも First Contentful Paint(FCP) と Largest Contentful Paint(LCP) 数値の改善に焦点を当てた施策について紹介します。『ごっこランドTimes』は子どもの興味・関心を伸ばし、親子で一緒に楽しめる情報が満載のメディアです。Web フレームワークとして Ruby on Rails を用いて開発しています。

背景

SEO 対策はサイトへの集客アップのため重要なのは既知の事実かと思いますが、2021 年 6 月から CWV も Google の検索ランキングの要因となります。 ( 詳しくは Google 検索セントラルブログ を参照してください。) CWV はユーザー体験をより良いものにするために Google が提唱しているコンセプトで、表示速度、反応速度、表示の安定性の 3 つ要素に焦点が当てられています。そのため、表示ズレやサイトスピード改善はより重要となります。これらのスコアや細かな指標は PageSpeed Insights で測定することができます。

改善前の状態

対象のサイトは表示ズレに関わる Cumulative Layout Shift(CLS) のスコアは良かったので、表示速度に関連する FCP と LCP に焦点を当てて改善を行いました。 改善前のスコアを計測してみたところ、 FCP の良好とされるスコアは 1.8s 未満、 LCP は 2.5s 未満とされているのでかなり悪いことがわかります。現状は広告も入っていない状態にも関わらずこの状況なので、将来的に広告が入った場合さらにスコアが下がることが予想されます。

  • TOP ページ
    FCP : 6.7s
    LCP : 9.2s
  • 記事ページ
    FCP : 7.1s
    LCP : 9.5s

改善前のTOPページのスコア
改善前の記事ページのスコア

改善の方針

ではどんな施策をすればよいのだろう?となるのですが、それについては PageSpeed Insights の「改善できる項目」が参考になります。どの項目に対する施策を打つのかについては各サイトの性質によって異なると思うので、そちらを考慮した上で項目を選択してください。対象のサイトでは

  • レンダリングを妨げるリソースの除外
  • 使用していない JavaScript, CSS の削除

に対応した施策を打ちました。

施策一覧

検討した施策は以下となります。

  • Web フォントを除外する
  • 表示処理に関係のない JavaScript の読み込み順番の変更
  • 使用していない JavaScript の削除
  • 表示サイズが小さい画像の Retina 対応をやめる
  • オフスクリーン画像の遅延読み込み
  • ページごとに CSS を分割する

各施策の詳細

Web フォント ( Google フォント) の使用をやめる

こちらが一番効果があると思います。 Web フォントを使用しているのであれば一番に検討すべき施策です。 Web フォントを外すだけで対象サイトの記事ページでは以下のようにスコアが改善されます。

  • FCP : 7.1s → 1.7s
  • LCP : 9.5s → 2.7s

Web フォントありのスコア
Web フォントなしのスコア

しかし、 Web フォントを外すとサイトの印象がガラリと変わってしまうので、そのあたりを十分に考慮した上で Web フォントを使用するかどうか検討すべきです。一部の固定の文字のみに Web フォントを使用したい場合は URL に &text= を付けて当てたい文字を記入すればサブセット化されるので、少量のフォントの呼び込みで済みます。

<link rel="preconnect" href="https://fonts.gstatic.com">
<link href="https://fonts.googleapis.com/css2?family=Noto+Sans+JP:wght@500&display=swap&text=フォントをあてる文字" rel="stylesheet">

表示処理に関係のない JavaScript の読み込み順番の変更

JavaScript を外部ファイルとして HTML で読み込む場合、記述順に呼び込まれます。なので表示処理に関係のないファイルはなるべく最後に呼び出したほうが良いです。そうすることでファーストビューの描画が早くなり、 FCP や LCP のスコア改善につながります。対象のサイトで表示に関係ないものをなるべく body 要素に近い場所で呼び出すようにしました。

使用していない JavaScript の削除

余計な JavaScript を読み込むと表示に時間がかかる場合があります。なので使用していないものは気づいたら削除しておくのが良いと思います。不要なファイルの見つけ方として Google Chrome の検証モードを用いるのが良いと思います。 検証モード内の Network 項目を見ると、呼び出されいる js ファイルのサイズや処理時間の一覧を見ることができるので、不要な js ファイルや処理に時間がかかっているファイルを見つけることができます。また、ネットワークスピードを Fast 3G にしておくと、 PageSpeed Insights のネットワーク環境に近づけることができます。対象サイトでは active storage や action cable を使っていませんでしたが、 rails new 時に skip し忘れていたので残っていました。

表示サイズが小さい画像の Retina 対応をやめる

サイトで使用している画像は Retina ディスプレイ対応させるため、元の画像サイズを表示されるサイズの 2 倍の大きさにしていることが多いと思います。もちろんこの対応すると読み込むデータ量が増えるため、表示スピードが遅くなる可能性があります。なので比較的 Retina 対応の影響が少ない、表示サイズの小さい画像の元サイズを表示サイズと同じにすると速度改善する場合があります。

オフスクリーン画像の遅延読み込み

オフスクリーン画像を最初のロード時に読み込む必要がないので、それらの画像を遅延読み込みするのが良いです。 JavaScript で遅延読み込みを行う方法もありますが、 HTML5 の標準仕様の loading 属性を使って画像に loading=lazy を付与するだけで HTML だけで遅延読み込みを行うことができます。

<img width="116" height="116" alt="" loading="lazy" src="image.png">

ページごとに CSS を分割する

  • app/javascript/packs/application.js
require("stylesheets/application")
  • app/views/layouts/application.html.haml
= stylesheet_pack_tag "application"

上記のようにとすべての CSS ファイルと一度に読み込んでいませんか?このようにすると当然、無駄な CSS も多数読み込むようになります。そこで各ページごとで読み込む CSS を分割する方法があります。各ページに対応したエントリーポイントとなる js ファイルを用意してそのファイルの中で必要な CSS のみを呼び込むようにします。

  • app/javascript/packs/article.js
import "../stylesheets/article.css"

そして各ページに対応する view ファイルから対象の js ファイルを呼び出します。

  • app/views/articles/show.html.haml
= stylesheet_pack_tag 'article', media: 'all'
= javascript_pack_tag 'article'

このようにすることで無駄な CSS 読み込みを避けることができます。規模が大きなサイトほど効果がある施策だと思いますが、大きくなってからだと対応が大変になるので、規模が小さいうちから対策しておくことをオススメします。

結果

対象のサイトでは開発環境でスコア改善が見られた以下の施策を実施しました。

  • 表示処理に関係のない JavaScript の読み込み順番の変更
  • 使用していない JavaScript の削除
  • オフスクリーン画像の遅延読み込み
  • ページごとに CSS を分割する

対象のサイトでは Web フォントを除外してしまうとサイトの印象が大きく変わってしまうため、 Web フォントは除外しませんでした。以下が対策後の数値です。良好なスコアにすることはできませんでしたが、 LCP は対策前と比べると TOP ページでは約 13% 、記事ページでは約 22% ほどスコア改善することができました。

TOP ページ

  • FCP : 6.7s → 6.5s
  • LCP : 9.2s → 8.0s

改善前のTOPページのスコア
改善前のTOPページのスコア

記事ページ

  • FCP : 7.1s → 7.1s
  • LCP : 9.5s → 7.4s

改善前の記事ページのスコア
改善前の記事ページのスコア

まとめ

ごっこランドTimes』 で行った CWV 数値、中でも FCP と LCP 数値の改善に焦点を当てた施策について紹介しました。サイトによって効果がある施策、ない施策は異なると思うので、まずは試してみると良いと思います。